そうですね。五十肩って痛いことは痛いけど、いつの間にか治ってしまうというイメージがありますよね。でも、何年経っても痛みや可動域制限が残ってしまうケースもありますので、安易に考えない方がいいと思います。
重症の五十肩
以前のブログにも記載しましたが、五十肩でもピンキリがあり、軽症のものから重症のものまであります。炎症の度合いやその持続期間に影響されます。運悪く?重症になってしまったら、凍結肩(拘縮肩)になってしまいます。
一説によると、8割は1.2年以内に症状がなくなり、残りの2割は症状が残ってしまうと言われています。上記の凍結肩になってしまっても、1.2年以内に症状がなくなり、元の状態に戻ることもありますし、何年経ってもそのままということもあり得るのです。
五十肩の定義
これって、分かってそうで分からないですね。調べれば調べるほどバラバラで、医師でも意見は分かれています。だから、広義の五十肩とか狭義の五十肩とかのややこしい言い方になるのですね。専門家である私ですら混乱するくらいですから、一般の方が理解できないのも当然と言えます。
私が理学療法士の学生時代に勉強したとき、五十肩の中には、腱板損傷(断裂)も石灰沈着性腱板炎も肩峰下滑液包炎も上腕二頭筋長頭腱炎も肩関節包の炎症・癒着も全て含まれていました。インピンジメント症候群も含まれていました。むしろ五十肩の原因としては、このインピンジメント症候群が主要因とさえ言われていました。
しかし、現在調べてみますと、五十肩とは肩峰下滑液包炎と肩関節包の炎症・癒着のことで、その他の腱板断裂とか石灰沈着性腱板炎とか上腕二頭筋長頭腱炎とかとは区別することが主流ですね。インピンジメント症候群は全く出てきませんね。
インピンジメント症候群
あれって感じで不安になったので、インピンジメント症候群について調べてみました。
「インピンジメント」とは、衝突・挟まるという意味です。
『インピンジメント症候群とは肩をあげたり動かすときに腱板や滑液包などが肩関節で“衝突したり挟まる”ことで痛みを起こして、それ以上に動かすことができなくなる症状の総称』とあります。
また、『インピンジメントには二種類あります。
1. 肩関節で骨に腱板と滑液包が衝突することをエクスターナルインピンジメントまたは肩峰下インピンジメントと言われています。
2. 肩関節で骨に土手のように付着している関節唇(かんせつしん)が衝突することをインターナルインピンジメントと言われています。これは投球障害肩で最近注目されています。』ともあります。
私が学生時代に習ったのは1.で、2.の概念は全くなく、1.=五十肩の主要因と言われていました。時代は進化したということでしょうか?(笑)
少し話が脱線しましたので本題に戻ります。
五十肩での凍結肩
現在主流の分類で言えば、五十肩と腱板断裂は別物として扱われているようです。重症の五十肩と腱板断裂の症状は非常に似通っています。だから、その鑑別診断が必要とのこと。
その上で腱板断裂でなければ五十肩と診断されるようです。で、五十肩での凍結肩となった場合が問題となるのです。最初は炎症により痛み、可動域にも制限が出ます。炎症が強く、この状態が長引けば、肩の関節包が縮んだり肥厚したり癒着したりします。また、肩峰下滑液包が炎症を起こせば、肩峰下滑液包(三角筋の下まで広がり三角筋の下では三角筋下滑液包)が癒着してしまいます。
これらの状態が長期化した場合、組織自体が変性を起こしてしまい、元の状態に戻らなくなってしまう場合があります。特に関節包は硬く縮んで癒着してしまうと、可動域制限が強く出てしまい問題となります。この場合に手術適応となるのです。
凍結肩での手術
凍結肩と診断されても原則は保存療法ですが、肩関節の可動域が屈曲・外転(前方拳上・側方拳上)ともに90°以下の場合で3ヶ月リハビリしても変わらなかった場合に手術が行われます。
術式は、関節鏡下授動術と麻酔下徒手的授動術です。どちらも関節包の癒着を剥がすことが目的です。
関節鏡下授動術:関節鏡のスコープを皮膚に穴を開け挿入し、関節包の中を見ながら、少しずつ関節包の癒着部分を剥がしていきます。
麻酔下徒手的授動術:関節鏡を用いて少しずつ癒着を剥がした後、医師が直接肩関節に外から力を加え、肩を動かしていきます。ただし、この過程で骨折や脱臼が生じる可能性があるため、慎重に力を加えていく必要があります。
私の手術見学
病院に勤務時代、私が外来リハで担当していた患者さんで、五十肩の患者さんがおられました。この方、50歳代の男性でした。結構五十肩の患者さんは得意にしてましたので、そのうち可動域は改善されてくると最初は高を括っていました。ところが、3ヶ月経っても、屈曲100°外転95°までしか改善しませんでした。
そして、肩関節授動術を入院して受けられることになりました。当時の私は、臨床経験4年目で、五十肩でこれほど重症な方を受け持ったことがありませんでしたので、ある意味自分の技術のなさのせいだと責任を感じていました。そこで、この方の肩関節内はどうなっているのか確認したくなり、手術担当の先生にお願いして手術見学をさせていただきました。
みなさんは、生体の癒着ってどの程度だと思われます?私はのりが貼りついたくらいのイメージでした。そして拘縮の大部分は痛みに対する防御収縮だろうと考えていました。実際、全身麻酔下(完全弛緩状態)で授動術を行うのですが、執刀の先生より私にやってみろと言われたのでやらしていただきました。
どういうことをしたのかと言いますと、ただ他動的に上腕骨を拳上させていっただけです。徒手的授動術とはそういうことなのです。ただ、可動域制限のあった屈曲100°以上は全く挙がらず、骨折するのではないかとハラハラして、これ以上の力を加えていいのか確認したほどです。
意を決して、さらに力を加えていきますと、メリメリという感触があり、さらに続けますと、バキッという音がして抵抗感がなくなり、180°まで挙がるようになりました。いまだに感触が残っているのですが、私が感じた関節包の癒着は、のりと言うより接着剤に近かったです。それほど強固で強靭でした。
これほどガッチリと癒着してしまっていれば、どんな手技をしようと施術による改善はとても無理です。つまり、手術しなければ一生治ることはないということです。
徒手的授動術の後で、関節鏡を関節内に入れ、肩関節包内の様子を確認できました。徒手的授動術の後だったので、関節包が剥がれて、所々割けていて、少量の出血が確認できました。関節包は白い布のような感じの膜でした。その部分をチューブで処理され、終了となりました。
術後の経過
翌日からリハビリ開始でした。かなり痛がるかなと予測していたのですが、それほど痛がる様子もなく、3週間の入院でしたが、完全に可動域も左右差がなくなり、無事退院されました。その後、数回外来で来られたのですが、全く問題なくリハビリ終了しました。
まとめ
重症な凍結肩の場合、拘縮が強度になり、関節包の広範囲の癒着が考えられます。そうなると、接着剤で貼りついたくらい強固なので、施術によってその癒着を剥がすことは到底無理です。全身麻酔下で筋肉が完全弛緩状態でもそれほど硬いのです。これが起きている状態でしたら、筋肉の防御収縮も加わりますので、当然無理だと想像がつきますよね?つまり、一生治らない場合はあるということです。手術をすれば別ですが。
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